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本当の英語に触れると英語が楽になる

「30日英語脳育成プログラム」の総合監修者である御園(みその)博士は、英語教授法の権威で国際的な言語学者。聴けて話せる英語教育の第一人者で、長年にわたりテレビ・ラジオでも活躍されてきました。御園博士がいつ、どのようにして英語を身につけられたのか、そして英語の楽しさとはどういう点なのかお話しを伺いました。

本当の英語と学校で習う英語は違う

青木
御園先生は、やはり子どもの頃から英語が得意でいらっしゃったんでしょうか?
御園博士
英語そのものというより、「音」を聴くのが好きでした。東京は築地の生まれで、たとえば金魚屋さんが「きんぎょ~きんぎょ」と来る。風鈴屋さんがカラカラと音を立てながら通る。そういう音がとてもおもしろかったですね。
青木
英語よりも、音声への関心の方が先だったんですね(笑)
御園博士
中学の時、地元お茶の水のあるところへ論語を習いに行っていたことがあります。テキストはなく、先生の言葉をそのまま繰り返すだけの授業です。半年後に自筆のテキストをいただいて、そこで始めて文字で内容を知るというもの。その頃から「音声先にありき」の授業は効果的だと感じていたんですね。私にとって英語はその延長なのです。
青木
子どもの頃に、外人の子どもたちともふれ合っていたとお聞きしました。
御園博士
家の裏にアメリカ人の住む大きなアパートがあり、そこの子ども達と遊んでいました。まだ小学生か中学生ですから、言っている意味はよくわからないのですが、おもしろいことを言っているなと感じたものです。たとえば卵のことを、彼らは必ず冠詞を付けてan eggと言います。音だけ聴くと「アネッグ」。「アン エッグ」ではありません。それで私は、卵は英語でアネッグだと思っていたのです。

ある日、学校の先生が「卵は英語でなんて言うかわかる人?」と聞くので「ハイハイ!アネッグです」と。「なんだアネッグって?エッグだろう」(笑) そういうことが何度かあり、中1の時に、"本当の英語と学校で習う英語は違う"と悟ったのです。

青木
青木
それだけ小さい頃から外人の子どもと触れ英語に興味があったら、学校での英語の成績もよかったのでは?
御園博士
高校の時には、簡単な英会話はできるようになっていましたが、文法が苦手でした。でも、当時は文法中心でしたから、文法の強い生徒の成績が5、私は4でした。でも、先生もクラスの皆も知っていました、「5のアイツより4の御園の方が英語ができる」と。そういうこともあって、ますます学校の英語は学校の英語、と割り切っていましたね。
青木
そう思われた後、英語の勉強はどのようにされていたのですか?
御園博士
高校2年の頃は、学校の英語のテキストは5月の連休には全部終わらせていました。読めばだいたいわかりましたから。そうすると授業が後からついてくるので、よけいに簡単でした。また、語彙や単語は、英語の小説や英語版「ラジオの作り方」などを読んで覚えていました。これがまたおもしろいのです。
御園博士
大学生になってからは、英字新聞や英字雑誌が役に立ちました。英字新聞には要らない単語が1つもありません。特に社説を毎日読むと、いっきに語彙が増えます。今だったら英語のニュースサイトもいいですね。そういう風に「量をこなす」努力はしていました。
青木
学校の英語だけに限らず、いろいろ英語学習の工夫をされていたのですね。英語を学ぶのに、なにか苦労したことなどはありませんでしたか?
御園博士
よく聞かれるのですが、苦労は無いんですね(笑)。英語をつまらないと思ったり、興味がなくなったりしたこともありません。英語の楽しさは、やはり最初は"通じる"ことでしょう。日本の英語教育では習った英語を使う場がほとんどないので、そういう楽しさを味わうことができません。その点私は身近にアメリカ人の友人がいましたから、環境的にも恵まれていたと言えるでしょう。
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一人旅したアメリカで「こんな単語も知らなかったのか」とショック

御園博士
青木
最初に行かれた外国は、イギリスでしたね。その後、さまざまな国に行かれていると思いますが、印象に残っている旅行はありますか?
御園博士
大学生の頃に、1人で行ったアメリカ旅行でしょうか。夜に到着してホテルへ行き、まだ寝るには早かったので最上階のバーに入ったのです。ビールなんて言うと馬鹿にされると思い、以前に読んだ小説に出てきた"マティーニオンザロックスを"頼みました。それがどんなお酒かは知りませんでした。

お酒が出てきた後にバーマンが、「ラフ?」と私に聞くのです。意味が分からず、よく英会話の本に書いてあるように、I beg your pardon?「もう一度言っていただけますか?」と尋ねたのです。それでも聴き取れず、でもあれは3回聞くと馬鹿にされると本に書いてあったので、2回尋ねてその後黙っていたのです。すると、バーマンがポンと出してきたのがオリーブの実。「オリーブを入れるか?」と聞いていたのです。

青木
私たち日本人はolive「オリーブ」と覚えていますが、それは日本語発音なのですね。
御園博士
そう。アメリカ発音では、oliveの最初のoは大きな口をあけて言う「ア」、次のiはごく小さく開いた口で言う「ァ」、最後のveは息が抜けて「フ」の発音になりますから、「ラフ」なのです。英語には絶対の自信を持っていましたから、こんなことも知らなかったのかとショックを受けました。これが「目と耳のズレ」なのです。結局そこを埋めていかないと英語は聴き取れないし、話せないことを、私は大学の頃に実感したのです。
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英会話は「異文化」を理解し、複眼的な視野を身につけるツールへ

青木
先生はイギリス、アメリカ、オーストラリアの3カ国で英語を勉強されています。なぜでしょうか?
御園博士
同じ英語圏でも、アメリカとイギリスではかなり発音が違います。「~できません」と否定するとき、アメリカ人は「アイ キャント」と言います。でもイギリス人は「アイ カーント」と言うのです。なぜそうなるのだろう、なぜ違うのだろう。そこに興味がありました。
御園博士
青木
オーストラリアもそうした興味から?
御園博士
南半球の英語はどういうものかという興味がありました。英語だけでなく、文化の違いもおもしろかったです。日本では北に行けば寒いのが当たり前ですが、オーストラリアは逆ですから、北に行くほど暖かい、いや暑い。太陽は同じように東から上がって西に沈みますが、日本のある北半球では、南を回って沈むので南向きが日当たりがいい。

オーストラリアは逆で、北を回るから北向きが日当たりがいいのです。私たちが当たり前と思っていることが違うという「異文化」。ある程度英語が話せるようになると、結局英会話とは異文化を理解するツールなのだと感じます。

青木
これから世界はますますグローバル化していきますから、英語のツールとしての役割は、もっと重要になっていきますね。
御園博士
英語を学ぶ目的の一つには、複眼的な物の見方を身につける、ということがあると思います。自国以外の言語の勉強をすると、その国の文化も学べますから、今までとは違う物の見方をすることができます。少し大きな、複眼的な物の見方ができるようになるんです。今後ビジネスで他国と付き合うとき、おそらく共通のツールとして英語を使うことになるでしょう。その時、最低限通じる程度の英語ができないといけないけれど、それプラス、複眼的な見方ができないと、うまく外国人と付き合うことはできないでしょう。

相手の考え方をどれだけ理解し近づけるか、それがポイントになってくると思います。これから英会話を学ぶ方は、ぜひそういう面も意識して、広い視野で英語にふれていただきたいですね。

言語学博士御園和夫

英語音声学、ならびに、英語教授法の権威で、国際的な言語学者。数多くの日本人に"使える英語"を指導してきた英語教育の第一人者。最近では中学高校の英語教員の指導者としても活躍。長年にわたりテレビ・ラジオでも活躍し、「百万人の英語」や「旺文社大学受験ラジオ講座」など、数々の英語番組を担当。

博士(言語学)。英語音声学、英語学専攻。英国レディング大学にて英語教授法研修、UCLA校客員研究員、クイーンズランド大学大学院博士後期課程修了。関東学院大学名誉教授。日本英語音声学会常任理事、英語面白楽会会長。
主な著書に『Vowel Space in English』(北星堂)、『コミュニケーション主体の英語音声学』(和広出版)、『英語の音節』(北星堂)、『英語音声学研究』(和広出版)、『英語発音指導マニュアル』(北星堂:編集主幹)、『耳から楽しむ英語ジョーク:聴くユーモア』(旺文社)、『成功する英語表現講座』(南雲堂)、『場面別英会話』(旺文社)、他多数。