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- 英語の音声/脱落と連結について
「You have a nice PC. という英文なんですが、何度聞いても私にはユーヴァナイス…と聞こえます。本当に ユー ハヴ ア ナイス と発音しているのでしょうか?」
というような質問を、最近たくさん頂きます。単語の正しい読み方に従って読むならば、絶対に「ユーヴァナイス…」とならないはずなのに、なぜそう聞こえるのか?という質問です。
もちろんこれは「音の連結」や「音の脱落」などが起こったことに他ならないのですが、なかなかこういった現象を認めようとしない方が多いのも事実です。
「ネイティヴは、ユーヴァナイス…(に近い音)と発音してますね!あなたの耳が悪いのではなく、実際にそう発音していますよ!」
なんてお答えすると
「もしそうなら、この話者は、正しい発音をしていないのですね!」
と書いてこられる方もいます。正しい発音とは何なのか?という定義も必要ですが、少なくとも一般欧米人の自然な会話=ナチュラルスピーチ、という点からみれば、これは明らかに「正しい発音」です。
いえいえ!「音の連結」を知らないの?ということを偉そうに言っているワケではないんですよ。なにを言おうとしてるのかと言うと、「ネイティブ達はみんな正しい発音で英語を話している!」と信じ込んでいる方が意外と多い!ということなんです。
英語を母国語としない日本人などと違って、生まれたときから英語を話している英語ネイティヴ達は、みんな「正しい発音」で話している。と信じて疑わない方が、思いのほか多いということです。ここでいう「正しい発音」とは、辞書に載っている通りの「発音」という意味です。
世の中の英語教材やスクールの先生達も、ゆっくりと正確でキチンとした発音で話していることも後押しして、そう勘違いしてしまうのかもしれません。
真実はというと、もちろん世の中の英語ネイティブ達全員が、辞書通りの発音をしているなんてことはあるわけがありません。私たちのような日本語ネイティヴをみても分かりますが、英語同様、私たちだって辞書とは異なる発音の日本語を「正しい日本語」として普段話していますよね?
例えばこんなの。
●「佐藤さんの長男、高校に行っていないの?」
この文章を、
◎ サトウ サン ノ チョウナン コウコウ ニ イッテイナイ ノ?
と発音する人はそう滅多にいないでしょう。えっ?そう発音する?ホント?少なくともモモスケはこう発音しています。
◎ サトー サン ノ チョーナン コーコー ニ イッテナイ ノ?
「サトー」や「チョーナン」って伸ばして(長音)発音していませんか?逆に「コウコウ」なんて言いにくくないですか?「イッテナイ」のように「イッテ(イ)ナイ」から「イ」が脱落することだって多々ありますよね?
●「いいえ、校長先生は体育館にいます。」
●「野郎ども!やってしまえ!」
「イイエ」は「イーエ」、「コウチョウセンセイ」ではなく、「コーチョーセンセー」、「タイイクカン」ではなく「タイクカン」のほうが自然です。「ヤッテシマエ!」は「ヤッチマエ!」ですね。
でもあなたのパソコンで、自然な日本語であるはずの「コーチョー」と入力しても、絶対に「校長」と変換されないことからも明らかなように、「コーチョー」は、辞書的には正しくない日本語です。
日本語を勉強中のアメリカ人から、こんな質問をされたら何て答えますか?
「佐藤さんの長男、という文章なんですが、何度聞いても私にはサトーサン ノ チョーナンと聞こえます。本当に サ トウサンノチョウナンと発音しているのでしょうか?」
モモスケなら…そうですね~
「本当は、サトウ サン ノ チョウナンが正しい発音だけど、日常会話では、より言いやすい言い方に変化してきたんだよ。特に早く言いたいとき、サトウサンではサトウの「ウ」が言いにくいので、言いやすく「サトー」と伸ばすようになったんだと思うよ。ウチの会社にはもっと省略して「サトさん!」なんて言う人もいるね。」
なんて答えるでしょうか?もちろんモモスケは国語学者ではありませんので、あくまで内容は推測ですけど。
そう考えれば、冒頭の質問も、おのずと答えが見つかりそうです。
「You have a nice PC. という英文なんですが、何度聞いても私にはユーヴァナイス…と聞こえます。本当に ユー ハヴ ア ナイス と発音しているのでしょうか?」
ね!もう答えは見えています。
「音の脱落」とか「音の連結」といったような文法用語を使って説明すると、なにやら英語が難しい学問のように思えてきます。でも何のことはない!ただ言いやすくするために、音を省略しているだけのことなんです。
●「体育館/タイイクカン」の「イ」が一つ無いのは「音の脱落」と同じ!
●「ヤッチマエ!」の「チ」は「テ」と「シ」の「音の連結」と同じ!
※タ行の「テ」とイ段の「シ」を合体させ、タ行イ段の「チ」かな?
そう考えれば、英語も日本語も「理屈」は同じなんだと気づくはずです。
ちなみに、help(助ける/動詞)[カタカナで書くならヘルプ]という単語も、発音が省略化されてきているそうです。前々回書いたように l 「エル」の音を発音するときは、舌を口蓋(口の中の上の部分)にくっつけますが、それを省略して発音するアメリカ人が多いとのこと。カタカナで書くなら
ヘゥプ
といった発音です。そういや海外ドラマで良く耳にする発音ですよね。「体育館」級の省略ですよね~
言葉は違っても、英語も日本語も省略の目的は「言いやすさ」。難しく考えすぎず、カンタンに考えましょう!